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現状​・課題

人口・財政

交通・都市構造

住環境

防災・環境・農業

観光・産業・歴史

​公共施設・インフラアセットマネジメント

​人口・財政

総人口・年齢別人口

 土浦市の人口推移について、1980年から1990年にかけては、高い人口増加率となっていましたが、2000 年をピークに減少傾向に転じました。

土浦市総人口推移

 年齢別人口について、幼年人口は減少傾向、老年人口は増加傾向であり、2000年には幼年人口と老年人口の逆転が起こりました。また、生産年齢人口も2000年頃からは減少傾向にあります。年齢別の人口構成割合で見ても、幼年人口、生産年齢人口の割合はともに減少傾向である一方で老年人口割合は増加し続けています。2000年には老年人口割合が 15%を超え、超高齢化社会となり、さらに2005年には第一次ベビーブーム の世代が 65 歳以上になり、老年人口が大幅に増加しました。今後は第二次ベビーブームの世代も高齢に近づいていき、さらなる少子高齢化が懸念されます。

​年齢別人口推移

自然動態

 自然動態について見てみると、2008年以降は死亡数が上回り自然減へと転じ、その後も自然減は拡大しています。出生数は年々減少していく傾向にあるのに対し、死亡数は高齢化の進展により増加傾向です。 2017年時点において自然減は483 人ですが、死亡数の増加により自然減のさらなる拡大が考えられます。

自然動態推移

 また、出生数に影響を与える合計特殊出生率は全国平均と茨城県平均を下回る低い水準にとどまっており、全国的に回復基調にある直近についても、土浦市は低下傾向となって います。2013 年の時点での合計特殊出生率は 1.33(全国平均 1.43)と人口置換水準の 2.08 を大きく下回っており、今後も大きく改善する見込みはありません。

社会動態

 社会移動に関しては、転入数が1998年以降減少傾向にあります。一方で転出数は、2004年以降は減少傾向です。2002年以降は一部の年を除き、転出超過で推移していますが、その傾向は比較的大きい時点であっても 300人程度の転出超過と、それほど大きな転出超過となっていません。

年齢別純移動数推移

 

 また、土浦市と茨城県内他市町村との間の社会移動の状況をみると、転入数から転出数を差し引いた純移動数では、かすみがうら市や水戸市、石岡市など土浦市の北側 に位置する市町村との間では転入超過となっている一方で、つくば市や阿見町、牛久市、 龍ケ崎市といった土浦市の南側に位置する市町村との間では転出超過となっています。

 茨城県外の都道府県との間では、東京都、千葉県との間では大幅な転出超過となってい ますが、埼玉県や神奈川県との間では凡そ均衡した転出入となっています。

 年齢別の社会移動状況を見てみると、男性の15~19 歳が 20~24 歳になる時に一度大きく転出超過となり、さらに 25~29 歳になるときに大きく転入超過となっています。これは、 高校卒業後の就職・大学進学等に伴う転出者が多い一方で、大学卒業後の就職による転入者が多いためであると推測されます。また、男女ともに30歳代での転出超過が目立ちますがこれは結婚や出産・育児や住宅購入などのライフイベントとそれに伴う住居変更が要因として考えられます。

財政概要

 財政収支について、土浦市の財政は慢性的な収支不足状態です。2017年度から2027年度の累積収支不足額は、130億円になる見積もりとなっています。

収支状況見通し​

 この財政収支の赤字分を補填するために利用してきた財政調整基金が枯渇する見込みです。財政調整基金は自治体が財政的に余裕のある年度に積立てておく貯蓄ですが、土浦市では、これが2024年度に枯渇してしまいます。

 財政調整基金が枯渇すると、以降は解消困難な財源不足へと陥るため、財政収支の改善は土浦市の喫緊の課題となります。

歳入

 2016年度の歳入の内訳は、市税の割合が最も高く、約 4 割を占めています。地方交付税(7%)、国庫支出金(14%)、市債(19%)も比較的歳入に占める割合が高くなっています。

 市税の例としては、市民税(個人・法人)や固定資産税などがあげられます。土浦市では、個人市民税税収は緩やかに上昇する見込みとしていますが、今後人口減少に伴って納税義務者数も減少していきます。さらに世帯年収割合を全国と比較しても、高所得者が特に多いわけでもありません。したがって個人市民税の増加は難しいと考えられます。 また、固定資産税税収についても、地価が下落している地区が多く、減少する傾向にあります。

歳出

 土浦市の歳出の合計はおよそ総額 560 億円です。このうち人件費、扶助費、公債費を含むものを義務的経費、投資的経費、その他には物件費、維持補修費、補助費をまとめたものを分類しました。投資的経費については、行政がプロジェクトによって能動的にアプロ ーチできることから柔軟に設定でき、扱いやすいものといえます。

2016年度の土浦市性質別歳出内訳

 2020年度までに現在の大規模なプロジェクトが完了するほか、投資的経費を抑えることで 減少傾向になっています。2021年以降は年間 35 億円で投資的経費を推移させる予定です。 この35 億円とは、既存の公共施設、交通インフラを維持更新していくために必要な金額で あり、新たな投資をしないことで投資的経費を抑え、財政収支の負担を軽減させようとする見通しとなっています。

​交通・都市構造

自動車

《通学路などの生活道路の整備》

 土浦市では幅員 4m 未満の狭隘な道路が多く、人・自転車・自動車の通行に危険や不便を生じている。また、幅員以外にも狭隘道路が通学路となっているにもかかわらず歩道がない道路もあるなど歩行者環境の整備が進んでいない道路があります。これらの問題から生活への影響もあり生活道路の整備が課題になっています。

《交通事故》

 土浦市の交通事故発生数は茨城県内で 3 位となっており事故発生件数が多くなっています。交通事故発生の多い危険区間として常陸河川国道事務所は県内 29 か所を指定していますが、その危険個所は土浦市に集中しています。事故が多い区間の道路構造としては高架橋付近と長い直線区間が多くみられました。この事から交通事故の多い道路構造に対しての対策が課題になっています。

茨城県市町村別交通事故発生件数

茨城県『交通事故発生状況9月』より

茨城県内の事故危険区間(黒い点が事故危険区間)

常陸河川国道事務所『第4期事故危険区間の対策方針』より

《渋滞》

 常陸河川国道事務所は一般道における主要渋滞箇所を県内において指定していますが、 土浦市にも多数存在している事が分かりました。それらの箇所には高架構造であるという事と、片側一車線であるという共通点が見られました。 この事から渋滞箇所への道路構造の改良を含めた対策が課題になっています。

コミュニティバス

 土浦駅周辺では『きららちゃんバス』という名前の特定非営利活動法人「街づくり活性 化土浦」が主体となって運営するコミュニティバスが存在します。このバスは土浦市内の 活性化を目的として運営されているバスであり、「街づくり活性化土浦」と土浦市と関東鉄 道バスの 3 つの団体によって運営されています。運賃は大人 150 円となっています。路線 は 3 路線存在しどのコースも 1 週 40 分程となっており年中無休の運行となっています。ま た、民間主導の事業である点を活かしてバスロケーションシステムや案内のボランティア の採用など様々な工夫が活発に行われています。

 コミュニティバスの課題としては路線の延伸や新設を市民から求められているという課 題があります。一方で延伸や新設による収支率の悪化が懸念される他、中心市街地の活性 化という当初の目的との相反も考えられる為に容易には要望に応じることは出来ません。

 もう 1 つの課題としては利用者数の減少があります。この減少は運賃の値上げと同時に 発生しており、これに対して早朝便の運行など新たなサービスを実験する事によって現在 対応策を検討しています。

乗合タクシー

 土浦市では高齢者の交通を支える為に乗合タクシーが運行されています。乗合タクシー は市の助成を受けて土浦地区タクシー協同組合と土浦市地域公共交通活性化協議会が協力 して行っています。対象者は 65 歳以上の高齢者とその介助者です。乗合タクシーは会員制 であり、市役所に用紙を提出し乗合タクシーの運営を行っている土浦タクシー協同組合に 電話で連絡し、年会費を支払う事で利用出来ます。年会費は利用者の自己負担額が 2,000 円であり、市の助成分は 11,000 円となっています。料金は 1 回の利用で 600 円となってい ます。予約は乗車日の 2 日から半日前までに電話で行う事になっています。運行の範囲は土浦市内のみとなっており、運行日は平日のみで運行時間は 8:00 から 16:30 までとなっています。利用者数は増加し続けています。

 乗合タクシーの課題は利便性の低さです。具体的には会員登録の煩雑さや、運行日や時間が限られているという問題があります。

鉄道

 土浦市には JR 常磐線が通っており、市内には神立駅・土浦駅・荒川沖駅の 3 つの駅があ ります。

 鉄道の課題は大きなものはありませんが、人身事故について 2010 年以降土浦駅で 11 件、 神立駅で 8 件、荒川沖駅で 7 件起こっており、ホームドアの設置の必要性があります。ま た、駅前の混雑という課題も考えられます。朝夕のラッシュ時の車での送迎による混雑が 特に大きな問題となっています。

路線バス

 土浦市で路線バス事業を行っている会社は関東鉄道・JRがあります。

 路線バスの課題はまず1つにバスの遅延の問題への対策です。遅延の多さはバスの交通手段としての魅力を低下させる危険があります。

 もう1つの課題はバス路線の廃止問題です。土浦では2001年以降40以上のバス路線が廃止されています。この事から公共交通の利用が困難な地域が出現しています。

公共交通の脆弱化

 以上の様な人口構造の変化によって公共交通の必要性が増大すると考えられるが、土浦 市の公共交通は脆弱化しています。『⼟浦市地域公共交通網形成計画』によると、市内の路線バスは廃止が相次いでいます。 この事からバスに代わる公共交通が課題となっています。

商業施設の郊外化・中心市街地の衰退

 土浦市の中心市街地の空き店舗数は図 0-5 の通り微増を続けています。また、市役所の 駅前への移転の契機となったのが商業施設の撤退であったことからも分かる通り市街地の 商業は衰退しつつあります。

土浦市中心街の空き店舗数の推移

土浦市『平成29年度 認定中心市街地活性化基本計画のフォローアップに関する報告』より

 中心市街地の商業施設に代わって市民の買い物先となっていると考えられるのが、土浦 イオンモールなどに代表される大型ショッピングセンターや、ロードサイド型店舗です。 郊外型店舗の持つ魅力としては、一つに多彩な店舗が計画的に配置されているという事 や、自動車による利用を円滑にする為の広い駐車場を有しているという事が考えられます。 この二つを可能にしているのは敷地の面積が広いという事です。この様に広い敷地を取得 する事は比較的地価が高く権利関係の複雑な市街地では困難でありショッピングセンター が郊外に立地する事の理由となっていると考えられる。

 商業施設の郊外化という問題への対策は高齢化とそれに伴う自動車使用不可能な人々の 増大が将来的に発生する土浦にとって課題です。

まちなか交通の不足

 土浦駅は昼間人口が多く、この事は仕事や娯楽目的の人口集積が起きている事を示唆し ています。この事からそれらの人々の移動を支えるまちなか交通の重要性は高いといえま す。 一方でまちなか交通を担っていると思われるきららちゃんバスと自転車についてはそれ ぞれ問題を抱えています。

 まず、きららちゃんバスについては路線の 1 周の距離が長く、狭い範囲でのまちなか交 通を十分に担えていない可能性があります。自転車については自転車専用レーンといった 自転車環境が十分に整備されていないという問題があります。

 この様なまちなか交通の不足が街の回遊性を下げ街の人通りを少なくする原因となって いるとも考えられ、まちなか交通の拡充が課題となっています。

市街地の拡散

 人口密度の低下と拡大した市街地の縮小を目的とした立地適正化計画について現状の計 画の範囲の広さが問題になるのではないかと考えられます。 現在の土浦市街地は人口構造の変化や公共交通網の衰退への対応や「歩いて暮らせるま ちづくり」という市の目的を達成する為に、その面積を縮小する必要がある様に思われま すが、立地適正化計画の居住誘導地域・都市機能誘導区域は市街化区域のほとんどを占め ており、2010 年時点で人口の 8 割が市街化区域に居住している事も考えると立地適正化計 画が遂行された後の人口密度向上という効果には疑問が残ります。 これらの事から立地適正化計画の改良が課題となっています。

更に将来の問題

 土浦市の交通・都市構造における近未来的な問題としては、1 つに電気自動車の普及に対 応した充電設備の整備という問題があります。土浦では道路上のスタンドなどの充電設備 は充実していますが、目的地となりうる施設の中でも公共施設や病院での充電設備の整備 が進んでいません。財政の制約の観点から、そういった施設への充電設備の普及率と均衡 を保った整備の推進が課題となっています。

 もう 1 つの問題としては路面状態の悪さが将来的な自動運転車の運用に悪影響を及ぼす 可能性があるという問題があります。自動運転の制御方法として有力視されている路面状 況や標識などを機械的に認識するマシンビジョンという方法がありますが、路面状況の悪 さがマシンビジョンの精度に影響を及ぼす可能性があります。

 道路や標識を良い状態に保つ事は財政の負担になる可能性もある一方で今後自動運転が 普及した場合に常磐道や主要国道を有する土浦市はそういった環境の整備する必要に迫ら れる可能性があり、低コストで自動運転に対応した道路を整備するという課題が生じる可 能性があります。

​住環境

利便性

 初めに徒歩圏内における日常生活の利便性にスポットをあて、生活にまつわる施設として、集会施設、病院(内科)、コンビニエンスストア、食料品店、日用品店、金融機関、公園、小学校、中学校、駅に関して中学校区ごとに各地区の特徴とともにまとめました。

土浦市の生活施設立地

《一中地区》

 一中地区は、土浦駅を中心として市役所や商業施設などが集積する中心市街地です。ま た、亀城公園や図書館など、市民交流の場も充実しており、利便性の面ではとても整えら れている地区です。

《二中地区》

 二中地区は、大学や高校など教育施設が集積している地区であり、土浦駅との間で通学 等による若者の自転車交通量が多い地域です。また、二中地区の中心部には徒歩圏に内科 がある病院施設がないことが課題としてあげられます。

《四中地区》

 四中地区は計画的に整備された住宅団地が多く存在し、医療・教育施設が集積している 地域です。一方で、地区の西部では居住誘導区域内において徒歩圏内に集会施設が不足し ています。 《都和地区》

 都和地区は工業団地が集まっており、居住誘導区域が点在していることが特徴です。都 和中学校周辺の住宅地では公園が多く立地していますが、他の住宅地では少なく、立地に 偏りがあります。また、日用品店や食料品店が徒歩圏にない誘導区域が存在しており、誘 24 導区域内においても利便性に偏りが大きい地区です。

《五中地区》

 五中地区は神立駅を中心とした副都心であり、おおつ野地区は協同病院の移転とともに 整備された住宅地が広がっています。一方で、神立駅周辺では徒歩圏内に食料品店が不足 している地域があることが課題として挙げられます。また、新興住宅街であるおおつ野地 区において集会施設が徒歩圏内にないことも課題として挙げられます。

《三中地区》

 三中地区は荒川沖駅を中心とした副都心として整備が進められ、国道や高速道路など広 域的な交通網が充実しています。一方で、駅付近や地区内の北部の居住誘導区域内におけ る集会施設の不足が課題として挙げられます。

《六中地区》

 六中地区は阿見町と隣接しており、自衛隊霞ヶ浦屯地や隊員の宿舎が立地しています。ま た花室川によって地区内が南北に分断されています。南北それぞれの地域で人口が集中し ている地域がありますが、地区全体として施設が少なく、特に地区内に金融施設が全くな いことが特徴的な地区です。

《新治地区》

 新治地区は地区全体の 74.9%が自然的土地利用であり、筑波山ろくや農産物が生み出す 自然豊かな田園環境があり、他の地区に比べ高齢化が顕著な地域です。 新治地区には、日用品や食料品、わくわくサロンなど地域の生活拠点としての施設が集 積している「さん・あぴお」という商業施設があります。しかし、居住誘導区域外に立地しているため、人口が集中している地域からの徒歩によるアクセスが難しいことが課題と して挙げられます。

保健性

 保健性に関して、伝染病予防と公害防止の側面について土浦市の現状を述べます。 伝染病予防の重要な指標として、汚水処理が挙げられています。土浦市の汚水処理人口 普及率は 96.2%(全国 90.9%・茨城 83.3%)であり、全国的に高い水準となっています。同様に下水道普及率も 87.9%(全国 78.8%・茨城 61.5%)であり、広く整備が整えられている ことがわかります。  公害防止に関して、土浦市は公害防止協定の締結と公害苦情・相談の受付の2つの施策を 行っています。現在、市に寄せられる苦情・相談の内訳は、悪臭、騒音に関するものが多 く、これらは工場などが起因する産業型公害ではなく、野焼きなど、近隣関係やモラルの 低下等によって起こる都市型公害が増えています。一方で、2015年度に実施された市民満足 度調査では、公害防止 25 に関する施策の満足度は 3.25(平均 3.05)であり、平均より高く、施策の継続的な実施が必 要です。

公害苦情・相談の処理状況

安全性

《防犯性》

 防犯に関して、土浦市では町内会単位で自主防犯組織が結成されており、2017年 3 月 現在、167 町内で約 7,000 名の方々による防犯ボランティア活動が活発であり、犯罪発生の 抑止に大きく貢献しています。これは茨城県内において最多の結成数です。また、2015年度に行われた市民満足度調査における「防犯まちづくり」に関する満足度も平均より高く、住民の防犯意識が高いことが言えます。

 一方で過去数年に遡っても土浦市の犯罪率は県内でも高い水準で推移しています。特に 窃盗犯が内訳の大部分を占めますが、窃盗犯の認知件数は年々減少しています。しかし、 粗暴犯(暴行、傷害、脅迫など)の認知件数のみ増加傾向がみられます。

刑法犯認知件数の推移

《交通安全性》

 土浦市の交通安全性について、2017 年の土浦市の交通事故状況は、発生件数 717 件(県内 3 位)、負傷者数 910 人(県内 6 位)、死者数 4 人(県内 12 位)、人口一万人当たり死傷者数 65.45 人(県内 1 位)と、交通事故に関して県内で高い順位を記録しています。

 一方で、茨城県全体で交通事故状況の推移については、発生件数、負傷者数ともに年々減少傾向にあります。

 また、市町村別交通事故状況の推移を見ても、土浦市の交通事故発生件数は年々減少傾向にあることがわかります。

 また、2012 年に日本全国で登下校中の小学生が交通事故に巻き込まれるトラブルが相次 いだことから、土浦市において「土浦市通学路交通安全プログラム」が策定されました。 このプログラムの主な内容としては、土浦市の各地区でスクールゾーンの速度規制、一方通行化や、歩道整備することなどが挙げられます。上記のプログラム策定後、各地の通学路で安全点検・安全対策が実施されたことが、土浦市において交通事故発生数、負傷者数が減少傾向にあることに起因していると考えられ、土浦市の交通安全性について、全体と しては今後も「土浦市通学路交通安全プログラム」を継続することで、交通事故発生数、 28 負傷者数を減らす上で重要であると考えられます。

 次に土浦市内の交通事故の発生場所について細かく調べると、大通り沿いや土浦駅周辺 など交通量の多い箇所で事故が多く発生していることがわかりました。一方で、五中地区では、神立駅西側の中神立町・中央神立の住宅街に交通事故が集中していることがわかりました。北部地区は西部に 6 号バイパスや、常磐自動車道土浦北インターが立地する工場集積地であり、トラック等の交通量が多く、周辺には教育施設も立地しているため、歩行者の安全対策に力をいれる必要があります。

快適性

《人為的環境の快適性》

 先に述べたように、土浦市は自主防犯組織の結成率が高く、自治組織が活発に活動して いることが特徴的です。一方で中心部では、マンション等に住む若者世代の自司会への参画が課題とされ、世帯ごとのライフスタイルによって住民間の交流に大きな差があることが考えられます。

 また、防災や衛生、景観などに影響を与える空き家に関して、土浦市における空き家率 の推移は、2003年の調査では 15.6%(全国 12.2%・茨城県 13.5%)2008年は 22.0% (全国 13.1%・茨城 15.3%)と大きく増加しており、全国や茨城県全体よりも高い傾向にあることが分かります。2017年に行われた空き家現状調査によると、空き家の数が多いだけでなく、7 割が管理不全、8 割に樹木の繁茂がみられるという結果となり、数の多さ以外にも問題があることが浮き彫りになりました。

 中学校区ごとに細かく見ると、空き家率においては新治中地区が高い一方で、管理不全空き家の割合については一中地区・四中地区・六中地区・新治中地区が同等に高くなっていることが分かります。五中地区がきわめて割合が低いことについては、おおつ野などの新興住宅街の整備が行われたことが影響していると考えられます。

地区別の管理不全空き家率

 

 これに対し市は、「土浦空き家等対策基本計画」にて、相談窓口を設ける、利活用セミナー等を行う、といった施策を制定しています。また、茨城県全体では「茨城県空き家バンク」 が設立されており、空き家の流通促進が図られていますが、県全体の物件数が少ないだけでなく、土浦市の空き家物件の登録は現在行われていません。今後の対策の方針として、 空き家の発生防止とともに、空き家の利活用の推進を推し量る必要があると考えられます。

《自然的環境の快適性》

 次に、徒歩圏における自然享受の場として公園・緑地に着目しました。土浦市には現在 262 箇所の公園が存在し、うち 52 箇所は都市公園です。また一人当たりの公園面積は、県の平均が9.3 ㎡であるのに対して土浦市は5.96 ㎡と、平均の 2/3 以下の値となっています。 下図は住区基幹公園の誘致距離を半径とし、人口メッシュを重ねたものです。

土浦市の都市公園立地図

 

図から公園の立地に関して地区ごとにばらつきがあることがわかります。 特に人口が集中している地区では、二中地区、都和地区、四中地区、三中地区において公園の規模や数、管理不足が見受けられます。

 また、都和地区では、約30年前から計画されている常名運動公園の計画地の管理が行き届いておらず、2010年時点で既に78億円を投資していることに加え、買い取った土地の雑草の処理など維持管理にもコストがかかるため、財政を圧迫しています。さらに隣には小学校があるにも関わらず、周辺に街灯も少ないため安全面の懸念がされます。

 次に、地区ごとにも都市公園の立地について詳しく調べました。ここではその中でも代表的な事例として都和地区について紹介します。下図五中地区の都市公園立地図の中央を見てみると、小さな公園が点在しているのが分かります。これは都市公園の基準に満たない小さな公園が集合していることを表しています。中央から下部にかけて人口が多いため色が濃くなっているのが分かりますが、中心より少し下にある濃いメッシュの中には公園が一つもありません。このように、徒歩圏内に公園がなく、小さな公園であっても満足にアクセスできない住民は他の地域でも同様に見受けられました。

五中地区の都市公園立地図

​防災・環境・農業

防災

財政面から見る防災

 土浦市において2018年度の一般会計総予算額は約 510億円となっています。そのうち、総務費のうちの防災費は約 0.5 億円です。そして総予算における防災費の割合は、同規模 の自治体と比較しても、0.10%と小さい割合となっています。 

 土浦市は東日本大震災を受けて、2013年度に地域防災計画の見直しを行いました。見直し前後の変化をみるために、下の図では土浦市の予算額に占める防災費の割合の推移を表しました。短期的事業による一時的な割合の増加は見られるものの、それらを除いた全体の傾向として防災費の割合は低いままです。

土浦市の予算額に占める防災費の割合

土浦市の災害対策-洪水

 中心市街地である土浦駅周辺はおおむね 3m~5m 程度の浸水が想定されます。その一方で市役所移転や図書館新設など都市機能がこの区域に集中してきています。このことから、 発電設備を備えてはいるものの、人員確保の面から、災害拠点として機能するはずである市役所が、浸水により機能しなくなる可能性が考えられます。

 現在までに行われた洪水対策としては、桜川下流 10 ㎞の土浦市街地の堤防整備や川底掘削などがあります。一方で、近年局地的豪雨による大規模な洪水が発生しており、土浦市街地でも洪水被害が及ぶことが想定されています。ハード整備では急速な対応ができないことから、ソフト対策として土浦市洪水避難地図が作成されています。しかし、逃げる向が矢印で示されているのみで、具体的なルートが示されていません。以上のことを踏まえると、洪水が起きた際には逃げ遅れが発生しうることが考えられます。

土浦市の災害対策-地震

 土浦市は市庁舎、消防署、避難場所といった災害拠点の耐震化率が現在 81.5%(県平均 91.7%)と低く、災害時に避難拠点として機能しなくなる可能性が懸念されます。

 土浦市はこういった地震による被害想定に対し、2020年度までに災害拠点の耐震化率を 95%にするという方針示していますが、現在の財政支出を見る限り耐震化率向上に対する事業がありません。これは財源が足りていないことが大きな原因だと考えられます。そのため現在考えられている対策を全て行うのは厳しいと考えられ、優先して耐震化すべき施設の検討を進める必要があると考えられます。

今後の防災面の課題

 災害対策に関する課題は未だに多く残されています。また、土浦市の予算は、減少して いくと予想されており、これに伴い災害対策費も減少していくことも考えられます。 以上のことを踏まえると、今後は限られた予算の中で防災対策の質をどのように向上させていくかが課題であると考えられます。

環境

自然環境

 『霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画(第 7 期)』によると、霞ヶ浦の水質は環境基準を大き く上回っており、生物多様性への影響が懸念されています。生物種保全の対策として里山 管理が挙げられますが、現在市の取組みは無く、主体の NPO は高齢化や後継者不足が問題 となっています。

生活環境

《廃棄物》

 土浦市のゴミの排出量は全国平均よりも約 1.5 倍多くなっており、対策として市は減量 化目標と資源化目標を掲げていますが、ゴミの排出量削減が市民にどういった利益がある のかを明確に示す必要があります。

《公害》

 騒音、悪臭の苦情はあるが、大きな問題にはなっていません。放射線・ダイオキシンは基 準値を下回っています。

快適環境

 住環境の問題として居住誘導地域に公園が少ないことが挙げられ、既存の二次林の活用 といった対策を検討する必要があります。

 

地球環境

 地球温暖化対策として、土浦市では CO2 の削減目標を立ており、人への意識改革と設備 投資を主に行っていますが、取組みの効果はあまり出ていません。

 

人づくり

 現在土浦市では環境教育があまり行われていません。私たちを取り巻く環境問題に対して 理解を深め、正しい認識と知識を持つための環境教育・環境学習と、共通認識を持つため に、情報を共有するための場づくりが重要です。

環境まとめ

 土浦市の直面する環境問題は多種多様で様々な対策が必要です。一般的に、環境問題の原因は都市構造や私たちのライフスタイルなどにあることがわかっています。土浦市では、 設備投資による対策や市民の環境意識を変えるために市民や事業所に対して積極的に情報 提供を行っていますが、水質や二酸化炭素排出量など一部の環境基準を改善できずにいます。これは、対策の効果を正しく測定し、見直していくが必要あることを示しています。 そして、市の財政逼迫が予想される中で、環境に充てられる財源は多くありません。よって、これからの環境の改善や問題解決には、地球温暖化と水質改善、空洞化対策と治水対 策といった分野を超えた複数の問題を解決できる政策や事業を検討し、展開していくことが重要です。

 

農業

農業の現状

 土浦市の基幹的農業従事者の平均年齢は 61.1 歳、60 歳以上の従事者の割合は 78.2%と なっており、高齢化とともに基幹的農業従事者の少子化も伺えます。 さらに農業従事者人口は年々減少しおり、基幹的農業従事者は 2000 年から 2015 年の 15 年 間で 2906 人から 1929 人と 977 人減少しており、農業従事者人口の大きな減少が予測され ます。

 農業産出額はかすみがうら市やつくば市などの周辺都市及び同規模人口の都市に比べて も低く、約 97 億円であり、産出額が大きいとは言い切れない現状です。土浦市の全予算のうち、農林業水産業費の占める割合は 1.1%です。 また経営耕作地面積は 2000 年の 3,047ha から 2015 年には 2,336ha と約 600ha も減少して おり、一方で耕作放棄地面積は 2000 年の 297ha から 2015 年には 634ha と 2.1 倍と大きく 増加しています。

 耕作放棄地は、病害虫の発生や日照被害、鳥獣害や景観への悪影響、火災の発生の原因になるなど、放置しておくと人々の生活に悪影響を与える可能性がありま す。 耕作放棄地が発生してしまう原因は市内北部では農業基盤整備が不十分であり、山麓という地形的制約の影響を受けやすいこと、東部ではレンコン栽培が盛んなために畑作従事 者が減少してしまい畑の放棄が進んでいること、牛久市との市境の地域では農業従事者が そもそも少ないことなどが挙げられます。耕作放棄地の状況が様々であることと同様にその発生要因も地区によって異なります。 この現状を踏まえ、以下では今後の土浦市の農業における課題について述べます。

 

課題:撤退と存続の農業

 上記に述べた現状を考えると、今後は土浦市内全域において農業を興していくことが難しいと考えられます。そのため土浦市として農業にお金をかけないことも考えられます。 しかし、以下の理由から一概に農業にかかわる事業をやめることは難しいといえます。

1. 農業を営んでいる方も土浦市民である。

2. 土浦市のアイデンティティとしてのレンコン農業

3. 地産地消の促進

4. 多面的機能の保持・活用

 農地には生産的機能のほかにも、環境的機能、防災的機能、文化的機能を持つとされて います。これらをまとめて多面的機能と言います。多面的機能は現在グリーンインフラとして大きく注目を集めており、活用されることが望ましいとされています。

 以上のことを踏まえると、土浦市内では農業を興していくことは難しい一方で維持していかなければならないといえます。

 

課題:今後の農業のあり方

 今後土浦市内での農業は発展的な存続に重点を置いていくのではなく、持続的な存続を考え、適切に農業を撤退していくことも考えなければなりません。

【存続の在り方】

 農業の多様な側面を踏まえたうえで、「どの農業を・どういった方法で維持していく のか」を農業区画レベルできめ細やかに決めていくこと、そして決定事項に沿った制度の整備が必要になります。

【撤退の在り方】

 市内の地理特性および立地条件に合わせた適切な撤退のための指針の整備が必要に なります。この際には後の土地利用を明確にし、適切な活用についても規定していく ことも必要になります。 この二つの視点の双方から、今後の土浦市の農業について決めていくことが農業分野における課題として考えられます。

 

防災・環境・農業の3分野としての課題

 現状、防災・環境・農業の 3 つの分野に関してはそれぞれの観点で独立した政策の展開 を行っています。そのため、各々の課題に対しては防災なら防災の、環境なら環境の、農 業なら農業の視点のみの立場でしか問題に対してアプローチできていません。

 こうした単一の立場からのアプローチでは、例えば、堤防整備などによって防災機能を 向上させることができたとしても、環境負荷が大きくなるなど、他の分野への影響を考慮 することが難しくなります。また、グリーンインフラのように、他の分野と共同して展開する施策も必要となりつつあります。

 以上のことを踏まえると、この環境・防災・農業の 3 分野に関しては各分野独立した政策・施策のみならず、それぞれが協力した政策・施策を考えていくことが必要になります。

観光・産業・歴史

産業

工業

 現在、土浦市にある工業団地は「東筑波新治工業団地」、「テクノパーク土浦北工業団地」、 「神立工業団地」、「土浦おおつ野ヒルズ」の4つがあります。 茨城県の県ごとの製造品出荷額等と土浦市の県内での製造品出荷額等はともに上位にあり、全国的に見ても土浦市は工業が盛んな都市であるといえます。

​製造品出荷額等

 2017 年に茨城県内区間で圏央道が開通したため、土浦市内は常磐自動車道と圏央道が交差する地域であり、流通の面から土浦市の工業立地は大変良好であると考えられます。

​工業団地

 しかし土浦市に焦点をあてると、2010 年から 2016 年にかけて事業所数・従業員数・製造 品出荷額等は横ばいの状況が続いています。

 さらに、現在土浦市にある 4 つの工業団地において、分譲可能な区画は土浦おおつ野ヒ ルズの 3 区画のみで、わずか 7.8ha です。つまり工業団地の多くが分譲完了状態にあり、 企業誘致の余地がないと考えることができます。

商業

 土浦市内の商店数、従業者数、年間商品販売額は年々減少傾向にあります。更に中心市街地の空き店舗数は増加しており、土浦市の市街地の衰退や経済の低迷は顕著です。

土浦市の商業の現状

 土浦市内の商業衰退の要因や、衰退による影響の広がりについて次のようなことが考えられます。下図は都市構造可視化計画による土浦・つくばの販売額分布の経年変化を表 しています。これらによると、1979 年は土浦市内の販売額が飛び抜けて高く、一強でしたが、つくばや荒川沖の発展により、土浦市中心の販売額はだんだんと減少し、2014 年には土浦市内に大型ショッピングセンターができたこともあり、駅周辺の衰退が際立ってい ます。この事から、大型ショッピングセンターや、ロードサイドショップの台頭による商業の郊外化が進んだと考えられます。

都市構造可視化計画による周辺商業推移

 

 土浦市内の商圏吸収人口を見ると、2009年のイオンモール土浦開店を契機に、傾向として減少から増加に変化しました。このことからも商業の郊外化が進んでいることがわかります。

土浦市内の商圏吸収人口

​観光

 下図は2017年度の「県内の市町村別年間観光客数」の推移を表しています。グラフ によると、茨城県内で土浦市は観光客数が比較的少なく、観光地として確立していないことがわかります。

茨城県内市町村別年間観光客数

 観光地の立地条件について 2009 年の小松原尚氏の既存研究では、「日本国民の 7 割以上 にあたる都市での生活者は、山間地域に対して、自らの日常生活とは異なった自然環境の 中での休息や様々な体験活動への期待が大きい」とあり、観光地の立地条件を以下のよう にまとめています。

・山岳と水辺の観光利用がされている

・誰もが楽しめるイベントが開催される

 

 この2つの条件をもとに土浦市内の観光について具体的にまとめました。

《自然資源》

 土浦市には霞ケ浦や筑波山麓といった豊富な自然資源があります。筑波山麓ではパラグライダー体験、霞ケ浦では遊覧船やクルージングなどのレジャー産業も行われており、市内には霞ケ浦総合公園や土浦港なども立地しています。しかし、湖観光を行っている他の観光地と比較して、土浦市は周辺施設に乏しい現状です。周辺施設の少なさは、他の市町村と比べ、霞ケ浦へ接する面積が小さいことが主な原因として挙げられます。そのため、 新たに施設を建設して観光地として確立させるのは難しいと考えられ、既存のレジャー観光の活用が重要と言えます。

 2017年の土浦港の遊覧船の利用者数は、島根県松江市の遊覧船利用者数と比較すると非常に少なく、土浦市での水辺観光の知名度はまだまだ低いと考えられます。上記のように、土浦市には観光地の立地条件として必要な山岳、水辺は存在しますが、観光資源としては活用しきれていないことが課題として挙げられます。

土浦港と堀川遊覧船の年間利用者数

《サイクリング》

 近年、土浦市はサイクルツーリズムに力を入れています。土浦市にはつくばと霞ケ浦を 結ぶ自転車道である「つくば霞ケ浦りんりんロード」が通っており、全国的に有名な「ビ ワイチ」や「しまなみ海道」と比較すると利用者は少ないが、増加傾向にあります。

 下図は、二つのサイクリングロードを利用する人の居住地を比較したものです。全国的に有名な「しまなみ海道」は 74%が県外利用者なのに対して、「つくば霞ケ浦りんりんロ ード」は県外利用者が少なく、割合は 27%です。このことから、「つくば霞ケ浦りんりんロ ード」の利用者の多くは観光目的ではないことが予想されます。

サイクリストの居住地(左:りんりんロード 右:しまなみ海道)

 

 水郷筑波サイクリング環境整備総合計画によると、同サイクリングロードを用いて、「地域の豊かな自然や食,人とのふれあいなどをサイクリングと併せて楽しむことができる地域」を将来の姿として設定しており、このような将来の姿を実現するために土浦市では様々 なサービスを提供しています。具体的には数種類のマップ・コースを作成して配布、種類 や形式が豊富なレンタサイクル等を行っており、サービス面では充実しています。その一方で利用者アンケートでは舗装の劣化と自動車との衝突の恐れが問題点として挙げられて おり、回遊性・安全性の点では課題が残ります。

つくば霞ヶ浦りんりんロード利用者アンケート

《イベント》

 土浦市には三大イベントと呼ばれるものがあります。それは、毎年 3 月下旬から 4 月上 旬にかけて行われる桜まつり、8 月第 1 土曜日・日曜日に行われるキララまつり、10 月第 1 土曜日に行われる土浦全国花火競技大会です。これらだけで、およそ 100 万人もの観光客が訪れます。その他のイベントとして主なものは、スポーツに関するものとしてかすみがうらマラソン、食に関するものとしてカレーフェスティバル、その他にも雛まつりなど、年間で約 30 ものイベントが開催されています。そして現状では、土浦市のイベントによる集客は、茨城県内においても 5 位と上位にあります。また、土浦市を訪れる観光客の約 60%は、イベントによるものとなっており、これは茨城県内でみても高い水準といえます。

 さらに、土浦市への来訪回数を訪ねたアンケートでは、5 回以上との回答が 50%を超え、リピーターの存在が大きいといえます。これは花火大会のリピーターが多くを 占めていると考えられ、その依存度の高さが伺えます。

 以上のことより、土浦市におけるイベントは、三大イベントを中心に集客が多く、これは土浦市の観光の特色で強みです。しかし一方で、イベントのなかでも花火大会による観光客の割合が格段に大きく、偏りがあるという課題もあります。

歴史

 土浦市には、まちかど蔵という城下町地域があります。まちかど蔵には、観光案内や観光土産品の販売を行っている「大徳」と、そば打ち体験や多目的工房である「野村」が代表的な施設としてあげられます。土浦市はまちかど蔵を利用した観光を提唱していますが、城下町観光を盛り上げていくには、いくつか課題があると私たちは考えました。

 有名な城下町観光地である川越や黒壁スクエアと比較すると、まちかど蔵は、シンボル的な存在はなく、また力を入れて 売り込んでいる名物品もありません。更に、川越では市の 0.38%を城下町の街並みが占めているますが、まちかど蔵は土浦市の 0.023%しか占めていません。よって、まちかど蔵単体で観光資源として利用するには問題点が多く、他の観光 資源と絡める必要性がある。

 立地については東京から車で約 1 時間で行けるので、都心からのアクセスは良いと言えます。しかし、同じ時間で行ける範囲には、「川越」や「鎌倉」があるため、土浦市だけが持つ強みではありません。

公共施設・インフラアセットマネジメント

全施設共通の課題

 人口の課題の節でも述べたように土浦市では人口減少及び少子高齢化が進んでいるため、それに伴い変化すると考えられる施設の需要に対応した適切な配置計画やサービス適正化、民間企業との連携などによるサービスの向上が必要です。また同じく人口減少が原因の財源減少と、扶助費等の支出増加の中で、公共施設やインフラ施設の大規模改修や建て替えによる多額の投資的費用が必要であるため、財源の確保及び施設数や事業の費用を抑える事による投資的費用の削減も考える必要があります。しかし一方で公共施設の 63.4%が築 30 年以上経過してい るため、大規模な改修や建て替えは行わなくてはなりません。

インフラ施設

 ここでいうインフラ施設とは道路及び上下水道を指します。市内のインフラ施設の普及率は県平均を上回っています。その多くが更新時期を迎えるため、施設更新費として現在の予算から年あたり 31.9 億円の増額が考えられます。しかしインフラ施設はネットワークで機能するものが多く、施設の縮小を図るのが困難であるため、縮小の検討は必要ではありますが、今ある施設の効率的な維持管理手法が必要と言えます。 その効率的な維持管理の一環としてインフラ施設の計画的修繕及び長寿命化を図ることができれば更新費用を圧縮することが可能ですが、市は「橋梁長寿命化修繕計画」等を策定しているものの予算の不足などが原因によって計画通りに進めることができていません。

交通施設

 交通施設は駅の東西にある市営駐車場を指します。両者共に稼働率低下および老朽化が問題となっています。稼働率の低下は周辺の私営駐車場の料金より割高であることが原因としてあげられます。日常利用では低い稼働率であるため、除却しても支障はありませんが、花火大会などのイベントの際には利用数が大幅に増えることから全く不要ではないと 考えられます。

消防施設

 消防施設は消防署及び分団車庫が含まれます。これら施設の問題としては老朽化があげられます。消防団に関する問題としては、所属団員の数は一定で推移しているものの定員に届いていないことがあげられます。

土浦消防団員数の実員及び定員推移

公園施設

 市民アンケートにおける住民の不満のほとんどが管理不全に関するものとなっています。 現状の公園費用予算の 7~9 割が外部委託されており、さらに徹底を図るためには削減および公園の順位付けを行う必要があります。また、公園の密集地区においては機能の重複し ているものがあるため、統合や機能特化型に作り替える必要があります。

 

コミュニティ・文化施設

 コミュニティ・文化施設のうち「亀城プラザ」「市民会館」の 2 つの施設は比較的近距離にありながら 役割が重複しており、両者の利用率が低くなっています。

亀城プラザの利用率集計表

市民会館の利用率集計表

子育て支援施設

 市内の私立幼稚園の充足率は 34.3%と低い水準ですが、一方で保育所の充足率は 82%と 高い水準となっています。幼稚園については 2021年度末には 0 園に再編予定であり、保育所は「公立保育所民間活力導入実施計画」に基づいて民営化をしていく方針ではありますが、委託後も市が保護者や事業者と調整を図り、必要に応じて積極的に関わっていく必要があります。また、民間保育所の経営悪化や、 保育士の不足に伴う待機児童への対策を行う必要があります。

 

教育施設

 小学校は市内に 17 校立地しており、築 40 年以上経過しているものが多いです。藤沢小学校、 斗利出小学校、山ノ荘小学校は統合され、新治中学校の敷地内に義務教育学校として集約されました。そして上大津西小学校と菅谷小学校は適正人数に満たず、対策が必要ですが統廃合先として考えられる上大津東小学校は児童数の増加が見込まれるため、現在は様子見をしています。また、中学校は市内に 8 校あり、築 30 年以上経過している建物が多いで す。小中学校共に年々減少しており、特に小学校ではそれが顕著です。

 

住宅施設

 ここでの住宅施設は市営住宅を指します。こちらも老朽化が問題となっており、改修および更新が必要ですが、市の財政から実行は難しいといえます。また入居率が高く、入居待ちの人々も存在していることから縮小化も難しくなっています。それに加え、市営住宅とは別に生活困窮者への住居確保給付金制度も実施しているため二重の給付が行われています。

 市営住宅の延床面積から今後 40 年で更新を行った場合の損益を計算すると約 130 億の損失となります。

 これら住宅施設の問題としては近傍同種家賃が市場家賃よりも低額になっているために 入居後に収入超過となった居住者の退去インセンティブにならないなど、家賃設定が困難であること。低所得者が集中定住することによる外部不経済。また利益を生みにくい事に由来する指定管理者制度利用の困難さ。そして生活困窮者のセーフティネットであるから管理運営は徹底しなくてはならないこと。以上 4 つが挙げられます。

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